周期説
ひかりの輪で紹介している社会学的・歴史学的・経済学的・自然科学的な各種の周期説や占星学の周期思想をご紹介しています

周期説としての占星学

20.終末を否定して希望ある未来を展望する占星学の未来観

 さて、占星学にも、歳差運動の25800年周期に基づく周期説がある。これは、天球上の春分点にある星座に基づくシンクロニシティの周期説である。今現在は、春分点に位置する星座は、魚座であり、魚座の特徴とシンクロした人類の文明となっているが、間もなく水瓶座に変わるので、人類の文明も変わるという。

 その結果は、一部の精神世界が主張する終末・ハルマゲドンなどとは異なって、人類は黄金時代を迎えるというものである。そして、この水瓶座の新時代・ニューエイジの到来を期待する精神世界の潮流が、ニューエイジ・ムーブメントと呼ばれている。

 なお、一説によれば、水瓶座の時代が本格的に到来するのは、24~25世紀とされているが、それは800年周期説において、21世紀から始まる東洋(ないし東経135度線上)を中心とした文明の絶頂期と、偶然にもほぼ時期が重なる。

 なお、地球の歳差運動が2万5800年であり、天球には12星座があるので、一つの星座の期間は、だいたい2000年ほどとなる。現在の魚座時代は、ちょうど紀元前後に始まったとされる(キリスト教の時代とシンクロ)。各時代の間には、明確な境界線はなく移行期があり、20世紀末から21世紀に、次の水瓶座の時代の影響が現れ始めて、24世紀ごろまでに完全に水瓶座の時代となるという説がある(※付記1参照)。

 なお、最近流行った盲説として、マヤ歴が終焉する2012年頃に、人類がフォトンベルトなるものに突入して大破局・終末と意識次元の上昇(アセンション)が起こるというものがあった。この説は、歳差運動の周期にあたる2万6000年弱の周期を説きながら、それを太陽系の銀河の公転周期と取り違えるという間違いを犯したため、科学的には全く不合理な説となっていたが、一部の人の間でそのまま広まってしまったようである(※付記2参照)。

 なお、初めて米国に定着してヨーガを広めたヨーガ行者であるパラマハンサ・ヨガナンダの師匠である、高名なスリ・ユクテスワも、インド占星学を扱い、天体運動に基づく計算から、人類文明の2万4000年ほどの周期説に基づいて、人類社会の未来を予見したことで知られる(その科学的な根拠はよく理解できないが、事実上、歳差運動とつながっていると私は理解している)。

 そのスリ・ユクテスワの人類文明には、1万2000年の上昇期と1万2000年の下降期があるとするが、今は上昇期であり、さらには終末や崩壊にはほど遠く、そのような心配は全くないという(※付記3、パラマハンサ・ヨガナンダ『あるヨギの自叙伝』(森北出版)、スワミ・スリ・ユクテスワ『聖なる科学』(森北出版))。

※付記1:春分点にある星座

 春分点とは、天球において、黄道(太陽の見かけの通り道)と天の赤道との2つの交点のうち、黄道が、南から北へ交わる方の点=昇交点のことであり、この点を太陽が通過する瞬間が、春分となる。この春分点の位置は、地球の歳差運動によって西向きに移動し、その周期は、約2万5800年である。そして、春分点の存する星座がその時代(1つの星座で約2千年)を象徴するという説がある。
 春分点は、紀元後1世紀から20世紀までは「うお座」にあり、20世紀末ごろに「みずがめ座」に入ったとか、現在移行中という説がある。うお座の時代の次は「水瓶座の時代 (the age of Aquarius)」と呼ばれ、変革を象徴しているなどと考えられ、何らかの世界的変革があると主張される。実際に春分点が「みずがめ座」に入り込むのは、500年以上後のことである。
 なお、十二宮と違って、星座の領域は不均等なので、「~座の時代」の期間は、2000年とは限らない。なお、カール・ユングは、独自の計算で水瓶座の時代の影響の開始を1997年としたという。

※付記2:2012年のフォトンベルト・マヤ歴終焉に伴う終末説の盲説

 この説は、地球が太陽とともに公転する銀河系には、それを横断するフォトンベルトという帯状の領域が存在し、公転周期が2万数千年であるから、その半分の1万数千年に1度の周期で、それに入ると主張した。しかし、太陽系がある銀河系の公転周期は、実際は10億年程度であって、科学的に全く間違っている。恐らくは、地球の地軸の歳差運動と、太陽系がある銀河系の公転運動を、取り違えてしまったと思われるが、それに気づかない一部の人たちが妄信してブームとなった。

※付記3:スリ・ユクテスワの人類文明の2万4000年周期説

 スリ・ユクテスワの人類文明の周期説は、1万2000年の上昇期と1万2000年の下降期によって構成され、より詳しくは以下の4つの期間に分かれているという。

①カリ・ユガ=鉄の時代:西暦500年~1700年の1200年
 唯物主義
②ドワパラ・ユガ=青銅の時代:西暦1700年~4100年の2400年
 電気と原子力の発達=空間を克服する技術
③トレータ・ユガ=銀の時代:西暦4100年~7700年の3600年
 精神感応の能力発達=時間を克服する技術
④サティヤ・ユガ=黄金の時代:西暦7700年~12500年の4800年
 高度な知性・神のみ心にかなった行動

 なお、上記の周期は歳差運動に近いものの、ユクテスワは(天文学が未発達な時代に生きたためか)太陽系が天体Xの周りを公転していると想定して、その周期と考えた。

 また、終末思想のインド聖典の「カリ・ユガ」は上記の周期のものとは異なり、それよりはるかに大規模な43億56万年周期のものであり(聖書の創造のみわざの1日)、宇宙の寿命は314兆1590億年であって、これがブラッマの一時代となる。よって、地球にまだ多くの上昇・下降の周期を繰り返す寿命が残っており、まだ崩壊する時期には来ていないという。
(※参考文献 パラマハンサ・ヨガナンダ『あるヨギの自叙伝』(森北出版)、スワミ・スリ・ユクテスワ『聖なる科学』(森北出版))


《出典:2023年GWセミナー特別教本『覚醒の道:仏教の幸福哲学 400年周期の仏教改革の開始』第2章より》

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