仏教思想
ひかりの輪の仏教思想をお伝えします

21世紀の社会のための仏教・宗教哲学

人類社会の周期説の総合解説:歴史は繰り返すか

以下のテキストは、2020年夏期セミナー特別教本『新型コロナ問題と免疫力の強化 文明周期説と循環の法則』第2章として収録されているものです。教本全体にご関心のある方はこちらをご覧ください。

 

1.はじめに

本章では、一部の社会学者・歴史学者が主張する人類社会の周期説に関して、なるべく総合的に解説したい。ここでの周期説は、いわゆる「歴史は(形を変えつつも)繰り返す」という類のものである。

広くいえば、周期説は、毎日昼夜を繰り返す、毎年四季を繰り返すといった、天体現象による科学的な根拠が明確なものもあるが、ここで扱う、主に社会学・歴史学の周期説は、そうした根拠は不明ないしは不十分なものであり、科学的な根拠のない経験則の範囲を出ない。

しかしながら、過去の体験から未来を予想して備えるのは人間の常であるから、人類社会を理解し、未来に備える手助けになる可能性があると考えて紹介する。

  

2.日本社会の大変動の80年周期説

第5代気象庁長官だった高橋浩一郎氏(1913~91)は、その著書『気候変動は歴史を変える』(1994年刊、共著、丸善)のなかで、日本は80年ごとに大変動に見舞われると指摘した(※参考文献1)。例えば、1620年の江戸幕府の確立を起点と考えるなら、1700年は享保の改革、1780年は寛政(かんせい)の改革、1860年は幕末、1940年の戦争の時代ということであり、詳細は下記の通りである。

なお、参考文献1は、2018年に公表されたもので、2020年の大変動を予期しているが、当然新型コロナ問題を予見はしていない。

 

中心年

日本

海外

1620年

1615年:大坂夏の陣→豊臣家が滅び江戸幕府が固まる

1620年:宗主国スペインの金融危機で伊ジェノアの低金利が終焉

1700年

1703年:江戸大地震

1707年:イングランドとスコットランドが合併

1707年:宝永大地震、富士山噴火→元禄時代の終わり、享保の改革へ

1780年

1783年:浅間山噴火、天明の大飢饉→寛政の改革(1787年)へ

1775年~83年:米国独立戦争

1783年:アイスランド・ラキ山噴火、1789年:フランス革命

1860年

1853年:黒船来航、1854年:安政東南海地震、1855年:安政江戸地震

1853~56年:クリミア戦争→ロシア農奴解放など近代化

1868年:明治維新

1861~70年:イタリア統一戦争

1861~65年:南北戦争→奴隷制廃止

1870~71年:普仏戦争→ドイツ統一、フランス第三共和政に

1940年

1931年:満州事変、1937年:日華事変、1941~45年:太平洋戦争

1933年:ルーズベルト政権、ヒトラー政権が誕生

1939~45年:第二次大戦

1950~53年:朝鮮戦争

2020年?

2011年:東日本大震災

 

 

80年周期といっても、実際にはプラスマイナス10年くらいの幅・期間があり、80年とは、その中心くらいと考えるべきという見解がある。

また、享保の改革(1716年)、寛政の改革(1787年)、幕末も、天変地異が関係している。享保の改革では、富士山の噴火と宝永地震(ともに1707年)、寛政の改革では天明の大飢饉(1783年)が、災害の影響で逼迫した幕府財政を再建する政策に結び付いた。幕末も、1854年に安政東海地震と安政南海地震、その翌年に安政江戸地震が発生し、これに黒船来航が加わって、同様に幕府の財政も破綻している。

なお、1460年代の応仁の乱(1467年)、1540年代のポルトガル商人の種子島漂着と鉄砲伝来(1543年)も付け加えると、「80年周期の大変動」はさらに遡ることができるという見方もある。

 

※参考文献1

https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/092600296/

  

3.米国でも注目される80年周期説

さらに、この80年周期説は、日本のみならず海外にも当てはまるように見える。米国では、1780年の前後に独立戦争(1775~83年)があり、その約80年後の1861年~65年に南北戦争があり、そのちょうど60年後に日本等と戦った第二次世界大戦があり、今年2020年は新型コロナパンデミックが発生した。そして、新型コロナでは、米国が最大の被害国となり、トランプ大統領らは、ウイルスとの戦い、第三次世界大戦などと解釈し、国防省は戦時体制を取っているともいわれる。

そうした中で、米国でも、今80年周期説が注目を集めている(※参考文献2)。米国の80年周期説も、日本と同じように以前から唱えられていたそうである。そして、トランプ政権を初期に支えたスティーブ・バノン氏や、共和党有力政治家のニート・ギングリッチ氏が傾倒していたという。それが、今年になってコロナパンデミックが起こって、有力メディアで再び注目されることになった。

米国の80年周期説の支持者の中では、今回2020年は、合衆国の4回目の大転機「4th Turning」と呼ばれているという。それは、国難を伴う転機なので、今年になるまでは、不吉で非合理的な予言として、忌み嫌う人が多かったという。

すなわち、1780年代の独立戦争(日本は「寛政の改革」)、1860年代の南北戦争(日本は幕末明治維新)、1940年代の第二次大戦、そして、今年2020年のコロナパンデミック以降というように、ほぼ80年周期で大きな転機・国難と、その後の大きな発展があるというのである。そして、バノン氏などによれば、今度は中国を打ち破って、米国がさらなる発展を遂げる転機と解釈するらしい。

また、2020年の大統領選は、非常に重要な意味を持つらしい。ここで大統領を出した政党が、過去の歴史・周期説によれば、向こう50年ほど支配的になると推測されるからだそうだ。例えば、第二次世界大戦以来の民主党や、南北戦争以来の共和党のように。

なお、今はトランプ大統領をはじめ、白人優先の共和党だが、実は黒人奴隷解放のために南北戦争を戦ったリンカーン時代の共和党は、黒人解放を掲げたリベラルな政党であり、米国を主導したが、第二次大戦後は民主党に主導権を奪われる形となったという。

このように、どの集団・どの国が一時、統治者・主導者となろうと、時代とともにその性質は変わり、そして統治者・主導者も変わる。仏陀の説いた諸行無常・盛者必衰は、どの国にも当てはまる不変の法則・道理であり、社会学の周期説も、無常の法則の一環だと思う。

 

※参考文献2

https://toyokeizai.net/articles/-/356585

https://www.nytimes.com/2020/05/28/us/politics/coronavirus-republicans-trump.html

  

4.欧州にも80年周期があるか

欧州でも、1780年前後に、世界史上の一大転機であるフランス革命(1789年)と、その一因となったアイスランドのラキ火山の噴火(1783年)による飢饉があった。

1860年前後は、1853年にクリミア戦争(敗れたロシアは農奴解放などの近代化に着手)、1861年にはイタリアが、国家統一を果たし、1870~71年の普(ふ)仏(ふつ)戦争では、勝利したプロシア主導でドイツは、国家統一を果たし、破れたフランスは、ナポレオン3世が失脚して帝政から共和制に移行した。こうして、1860年を挟んだ前後10年の間に、多くの欧州国家が近代国家に脱皮したが、米国も同時期の南北戦争を経て奴隷制が廃止となっている。

次の1940年を挟んだ前後10年間は、1937年に始まった日中戦争と、ナチス・ドイツのポーランド侵攻が口火を切った1939年からの欧州の戦争があった。これは当初、別々の戦争であったが、最終的には、米国をも巻き込んだ世界大戦となった。

  

5.2020年と80年周期説

こうして80年周期説を知っている人は、今年2020年の大変動を以前から予想していたのであるが、実際に新型コロナのパンデミックが発生する事態に至った。80年前の1940年は第二次世界大戦の直前・前年である。そして、安倍首相は、新型コロナ問題の発生に伴い、ジャーナリストの田原総一朗氏に「第三次世界大戦は核戦争だと思っていたが、この新型コロナウイルスが第三次世界大戦だった」と漏らしたという。

また、新型コロナの陰に隠れているが、東京五輪の延期も、80年周期の現象ということができる面がある。というのは、80年前の1940年にも、東京五輪が日中戦争の膠着(こうちゃく)のために中止(日本政府が返上)になっている(※参考文献3)。

しかも、その日中戦争の膠着の原因は、1938年の「武漢」での作戦とされる(※参考文献4)。80年の時を経て、同じ武漢での出来事で東京五輪が中止ないし延期になったということならば、偶然であっても、あまりにも不幸な繰り返しである。なお、この東京五輪の延期も、80年周期説の視点から、今年になる前から一部でその可能性が指摘されていた(※参考文献5)。

 

※参考文献3:東京五輪
https://ja.wikipedia.org/wiki/1940%E5%B9%B4%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF

※参考文献4:武漢作戦
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E6%BC%A2%E4%BD%9C%E6%88%A6

※参考文献5:2020年の東京五輪の延期・中止の予言

https://lite-ra.com/i/2015/09/post-1456-entry.html

https://ameblo.jp/takejiro100/entry-12541051596.html

  

6.近代日本社会の80年周期説

そして、この80年周期説に関しては、中心年の2020年、1940年、1860年などの前後だけでなく、日本の近代の歴史の全期間において80年の周期が見られるという見解もある(※参考文献6)。その一部を紹介すると以下のとおりである。 

1868年:明治維新 → 1945年:第二次世界大戦敗戦

1877年:西南戦争・官僚制開始 → 1955年:自民党政権発足 

1912年:大正に改元 → 1989年:平成に改元

1914年:桜島が破壊的大噴火 → 1991年:雲仙普賢岳で大噴火 

1915~1919年:第1次大戦バブル → 1985~1989年:平成バブル

1920年~:大正バブル崩壊~昭和金融恐慌 → 1990年~:平成バブル崩壊~金融不安 

1923年:関東大震災 → 1995年:阪神淡路大震災

1929年:世界恐慌 → 2008年:リーマンショック 

1933年:昭和三陸地震の津波 → 2011年:東日本大震災による津波

1940年:東京五輪の中止 → 2020年:東京五輪の延期  

1941年:太平洋戦争開始 → 2020年:新型コロナパンデミック

 

※参考文献6

https://ameblo.jp/takejiro100/entry-12342950675.html

https://ameblo.jp/takejiro100/image-12598900551-14762857139.html

http://www.fukkatu-nagoya.com/book/80nensyuki-mokuji.html

http://www.fukkatu-nagoya.com/book/80nensyuki-mokuji_files/80nen-shuki.pdf

 

7.80年周期説の背景にある社会構造 

米国では、80年周期説の背景に、軍事専門家で評論家でもあるマイケル・ホプフ氏が著書で紹介した「人間社会の4サイクル」が内包されているという。その4サイクルとは、以下のとおりである(前出の※参考文献2参照)。

1 HARDTIMES CREATE STRONG MEN(苦しい時代は強い人間を生む)

2 STRONG MEN CREATE GOOD TIMES(強い人間は楽な時代を生む)

3 GOOD TIMES CREATE WEAK MEN(楽な時代は弱い人間を生む)

4 WEAK MEN CREATE HARD TIME(弱い人間は苦しい時代を生む)

 

この4つのサイクルの1つの期間が、人間が成人する20年であり、1つの世代の傾向を形成する期間だとすると、4サイクルで合計80年の周期になる。

なお、日本の80年周期説の支持者も、似たようなことを主張する人がいる。その場合は、親子三代のサイクルが80年というものである。初代が苦労して大成し、二代目がそれを維持するが、甘やかされて育った三代目でつぶれるという経験則である。これが社会全体にも当てはまるだろうというのである。

また、日本にも、この80年周期を4つのサイクルに分けて、それぞれ20年単位の社会の再生・成長・停滞・破壊の循環があると説くものもある。

 

8.もう一つの近代日本の周期説:60年周期説 

哲学者の柄谷(からたに)行人(こうじん)氏(元法政大学教授)などが、近代日本社会の60年周期説を唱えた(例えば「歴史と反復」『定本 柄谷行人集5』)。その後、社会学者の大澤真(ま)幸(さち)氏(元京都大学教授)なども同様の主張をしている(※参考文献7)。

そして、下記の表は、柄谷氏の60年周期説に基づいて、日露戦争後の「明治」と「昭和」の反復構造を再整理したものであり、同氏と対談した際に高澤秀次氏(現苫小牧駒澤大学教授)が2008年6月に作成したものである(※参考文献8)。

 

明治日本と昭和戦後の歴史的反復(60年周期の再現前) 

1905:日露戦争終結(ポーツマス条約) → 1965:日韓条約調印(韓国進出の契機)

1906:満鉄設立(金融資本大陸進出) → 1967:資本自由化・GNP世界3位 

1907:足尾銅山・暴動罷業 → 1960年代後半:公害社会問題化(水俣)

1908~11:第二次桂太郎内閣とアナキズム → 1967~70

第二次佐藤内閣と全共闘運 

1909:自由劇場起こる(新劇) → 1969:アングラ演劇運動全盛

1911:大逆事件・関税自主権の確立 → 1971:三島由紀夫自決・変動相場制に移行 

1912:明治アナキズムの敗北と啄木の死 → 1971:全共闘運動終息と高橋和巳の死

1917:石井・ランシング協定  → 1977:日中平和条約・米中国交正常化

(中国の領土保全・門戸開放)

 

※参考文献7

https://bookmeter.com/books/515246

※参考文献8

http://web.nagaike-lecture.com/?eid=911119

  

9.オウム事件と9・11テロ事件で再び注目された60年周期説

そして、この60年周期説は、1995年のオウム真理教事件と、2001年の9・11テロ事件で、あらためて注目されることになった。その事情は、以下のとおりである。

1935年に、大本教という宗教団体に対する激しい刑事捜査・弾圧事件が起こり、翌年の1936年に、2・26事件という武力革命のテロ事件が起こっている。そして、この2つを合わせて考えてみると、そのちょうど60年後の1995年に、オウム真理教の地下鉄サリン事件が起こっている。なお、2・26事件を起こした青年将校の中には、大本教のシンパが多かったとされ、大本教教祖出口王仁三郎は、天皇に対する不敬罪で逮捕されている。

また、1941年に第二次世界大戦が始まったが、ちょうどその60年後の2001年に、9・11同時多発テロ事件が起こっている。9・11テロが発生した直後の米国メディアは「2回目の真珠湾攻撃」と騒いだ。これは、イスラム原理主義者の宗教的動機に基づく航空機による自爆テロが、60年前の大日本帝国による真珠湾に対する航空機による奇襲攻撃や神風特攻隊と重複したからだと思われる。

なお、ジャーナリストの立花隆氏は、9・11テロに結び付くイスラム原理主義者の自爆テロは、元をたどれば、日本赤軍が中東地域で行った自爆テロを、イスラム教徒が見たことがきっかけであるとしている。さらに、9・11テロでは、早朝の大都市で複数の公共交通機関を使用した同時多発のテロが行われたが、その形態が地下鉄サリン事件の形態と酷似していることから、そこから影響を受けた可能性も指摘されており、大日本帝国の対米戦争も合わせて、9・11テロに対する日本の影響が指摘されている。

 

※付記 

柄谷氏は60年周期説を唱えたが、近年は60年周期説を放棄し、120年周期説へと転回したという。その理由として、同氏は、オウム真理教が同氏の60年周期説を見て20世紀末に対米戦争が起こると考えたことが、そのテロ事件につながったという噂を聞き、さらには、そのことを元オウム幹部がHPに書いてあるのを見て、単なる噂ではないと考えたからだとしている(※参考文献9)。

この元オウム幹部とは、上祐のことだと推察されるが、私たち元オウム信者が柄谷氏や大澤氏の60年周期説を知ったのは、オウム事件の前ではない。オウム事件より後に、オウム事件の反省・総括をした過程の中であり、この点に関する同氏の推測・理解は、誤りである。また、上祐が最初に60年の周期に関心を持ったのは、オウム事件の後に、麻原の世紀末予言が大日本帝国の歴史の60年周期の反復であると自分の中で気づいた時であって、その時もまだ、柄谷氏の60年周期説を知るには至っていない。

 

※参考文献9

http://www.webchikuma.jp/articles/-/486

「私は90年代になって、徐々に60年周期説を疑い始めたが、それをはっきり放棄するにいたったのは、オウム真理教の事件があったからだ。私はつぎのような噂を聞いた。オウムが事件を起こしたのは、私の反復説を読んだからだ。私の示した明治と昭和の年表を未来に延長すると、1999年には日米戦争が起こる。ゆえに、その前に、行動に移らねばならない。オウムが蜂起を考えたのは、そのためだというのだ(のちに、オウムの元幹部がそのことをウェブ上に書いていたので、たんなる噂でなかったことを知った)。したがって、私は60年周期説を放棄したのだが、そのとき、たんに120年周期で考えればよいのだ、ということに気づいた。その意味で、現在を新自由主義=新帝国主義としてとらえる私の見方も、95年に始まったといえる。」

(『柄谷行人講演集成 1995-2015 思想的地震』に関する柄谷行人氏の自著解題をPR誌「ちくま」2月号より掲載したもの)

  

10.60年周期説の背景となった文化や社会構造

60年周期説には、いろいろな背景がいわれている。そもそも日本・中国の文化には、干支60年の伝統文化がある。また、60年は明治などの近代日本人の平均寿命に近い。よって、一世代を経て、過去と似た過ちと成功を繰り返すのではないかという説もある。

なお、干支60年は、古来中国において、木星の公転が約12年であることが知られており(正確には11.86155年)、古代中国の天球分割法である「十二次」を司る最も尊い星として「歳星」と呼ばれていたことと関係があるという説もある。12の倍数が60であるからだ。古代バビロニアでも、木星は神マルドゥクと同一視され、木星の黄道に沿う約12年の周期を用いて黄道十二星座の各星座を定めていた。こうして、12は占星学の基本数になっている(※参考文献10)。また、前述の120年周期説も、まさに12の倍数である。

また、木星に次いで太陽系の中で大きな惑星の土星は、公転周期が約30年(正確には29.53216年)であり、木星の12年と土星の30年の最小公倍数が、60年であることが関係しているという説もある。一部の占星学では、木星と土星という太陽系の中の最大の惑星の影響を重視する思想がある。なお、一部には60年周期説の半分の30年周期説や、80年周期説の半分の40年周期説を主張する人もいる。

なお、中国には「中国が2020年にひどい目に遭うのは天命だ」という説があるという(※参考文献11)。2020年は干支60年の中の庚子(かのえね)の年であり、庚子の年には、中国には大乱が起こるという。具体的に庚子の年の中国に、過去に何があったかというと以下の通りである。

 

1840年 アヘン戦争(イギリスにひどい目に遭わされた)

1900年 列強8カ国による北京進撃(列強にひどい目に遭わされた)

1960年 毛沢東の大躍進運動による大飢饉(毛沢東にひどい目に遭わされた)

2020年 新型コロナのパンデミックの武漢での発生、及び大洪水

 

※参考文献10

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%98%9F

※参考文献11

https://money1.jp/archives/18612

  

11.複数の周期の存在は矛盾ではなく、波のように重なり合うという考え

ここで80年や60年といった複数の周期があるのは、矛盾ではないかという見方があるかもしれない。しかし、この周期説は、定期的に繰り返される波と同じように考えることができて、物理的な波と同じように、複数の波を総合して見ることができるのではないかという考え方がある。

すなわち、2つの異なる周期の波がある場合は、その両者の波が共に高くなったり低くなったりする時を「両者の波が共振する」というが、その時は、波はいっそう高くなったり低くなったりする。よって、共振する時は、現象がより明確に起き、逆に両者の波が相反する時は、現象は不明確になると考えるのである。

そして、物理的な波だけではなく、経済学の分野でも、好景気・不景気の周期的な循環が複数あるとされている。古典的な景気循環論として、キチン循環(40カ月)、ジュグラー循環(10年)、クズネッツ循環(20年)、コンドラチェフ循環(50年)という4つの周期的な循環があるとされ、ここでも循環は波とも呼ばれる(※参考文献12)。

この視点から、最後に東京五輪の行方に関して加えておきたい。80年周期説に従うと、2020年東京五輪は、1940年と同じく中止となる。一方、60年周期説に従うと、2024年の60年前の1964年に東京五輪開催に成功している。

そして、実際に一部の政治家、例えば、古川元国家戦略相(自民党)や、小野泰輔元福岡県副知事・東京都知事選候補者(維新の会)などが、2020年の東京五輪の中止と、2024年への順延を主張している(※参考文献13)。今のところ、安倍政権は、何とか2021年に東京五輪を開催したい意向だと思われるが、今後を注視していきたい。

 

※参考文献12

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%AF%E6%B0%97%E5%BE%AA%E7%92%B0

※参考文献13

https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20200618-00183928/

https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200608/pol/00m/010/002000c

  

12.世界文明の800年(1600年)周期説

日本の文明研究家の村山節(みさお)氏(故人)は、世界史年表を作成する過程で、様々な地域・時代の歴史に共通する、文明の盛衰の周期を発見したと主張し、これを文明法則史学、人類文明800年周期説などと呼んだ(※参考文献14)。

それによると、①世界各地の文明史には1600年の盛衰周期が存在し、②800年の低調期と800年の高調期に大別でき、両者は文明創造力や社会の活力において大きな差をもち、③1600年を周期として準備→開花→成熟→崩壊の過程を繰り返し、あたかも1600年周期の四季をもつように振る舞っているという。

さらに、この周期は、東洋と西洋の2系統に大別される二極構造をもっており、両系統は互いに逆位相の関係にあり、一方が低調期の時に他方が高調期となり、世界史は800年毎に文明の交代期を迎える。西の文明は、古代エジプト系統・ヨーロッパ系統であり、東の文明は、西アジア系統・インド系統・中国系統・日本系統を含むという。

そして、 過去の周期性がそのまま再現されると、21世紀は西の文明が崩壊し、代わって東の文明が夜明けを迎える文明交代期となる。

 

※参考文献14:文明法則史学

http://bunmeihousoku.com/bunmei

   

13.400年周期説:日本史・大地震や水害・仏教

また、文明法則史観では、この1600年の周期の下部構造として、より小さな盛衰の周期が、おおむね4回(3~5回)現れ、より細かな周期が並んで登場する場合もあるという。そして、実際に歴史学者の酒井信彦氏(元東大史料編纂所教授)や中西輝政氏(京大名誉教授)は、日本史の400年周期説を唱えている(※参考文献15・16)。

具体的には、①西暦1600年頃に、関が原の戦い・徳川幕府の開始があり、近代~現代の流れが始まり(首都は江戸・東京である)、②西暦1200年前後に、鎌倉幕府という武家政権が初めて成立して中世が始まり、朝廷や寺社などの勢力が衰え、③西暦800年頃に、平安京に遷都されて、平安時代が始まり、④西暦400年頃に、大和政権が成立したというものである。

この説の場合も、800年周期説と同じように、21世紀は、時代の変わり目ということになる。加えて、800年が400年のちょうど2倍数であることもあって、400年周期説と800年周期説とを結びつけて解釈する人たちがいる(※前出の参考文献15)。

さらに、自然科学の分野でも、400年周期説を唱える識者がいる。国立の地球総合研究所の中塚武教授は、大地震・洪水の連鎖が、400年周期で起きるとの調査結果を発表している(※参考文献17)。

最後に、この400年周期説を、日本の仏教史に当てはめると、①400年頃に、朝鮮等を通して日本に私的に仏教が伝来したと思われ(中国では大乗仏教の翻訳・解釈が盛んになり)、②800年頃に、空海・最澄による密教の導入という仏教改革が起こり、③1200年頃は、鎌倉新仏教が起こり、④1600年以降の江戸時代に、今も続く仏教の檀家制度が導入されたという流れになっている。

そして、現在の2000年代においては、その檀家制度や葬式仏教が崩壊する兆しが出てきている。そして、それを加速させる可能性があるのが、新型コロナパンデミックである。疫病退散などの信仰を集めていた以前とは変わって、今回のパンデミックにおいて、人々の中に、寺社が何もしてくれなかったという認識が広まり、寺社離れが加速するのではないかと、多くの寺社の関係者が考えているという。

このように、現在、日本の仏教及び宗教全体においても、歴史的な変革の時が訪れようとしているのかもしれない。

 

※参考文献15:酒井元教授の見解

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=228969

※参考文献16:中村名誉教授の見解

https://sessendo.blogspot.com/2017/11/400.html

※参考文献17:中塚教授の調査

https://tocana.jp/2017/10/post_14676_entry.html

 

14.世界の文明の中心地が800年周期で交替する説

村山氏の文明法則史学と同じ800年周期説をとりながら、作家の千賀一生氏は、スピリチュアルな体験をきっかけとした歴史分析に基づいて、以下の主張をしている(※参考文献18)。

 

①人類の文明の中心地が、800年周期で東西に交替して現れる

②各中心地は、経度にして22・5度の間隔をあけて存在する

③今現在は欧米を中心とした文明の最中で、中心地はロンドンで、副中心がワシントン

④21世紀に始まる新しい800年の文明は、東経135度(=日本・明石・淡路他)上に、中心が来る

⑤それは、精神性・一元性・女性原理を重視した文明である

 

これに基づいて、千賀氏は「わの舞」という踊りを提唱して普及活動をしている(※参考文献19)。

この説は、歴史学・歴史分析に加え、多分にスピリチュアルな要素を含んでおり、なぜ800年周期かというと、回転する駒が首を振るように地球の地軸が25800年ほどの周期で歳差運動をしている結果であるという(25800年の32分の1がおよそ800年となる。また360度の16分の1が上記の22・5度である)。

なお、千賀氏は、惑星直列の周期である9年を重視し、9年周期説も説いているが、9年周期といえば、日本の伝統文化の中では九星気学がある。また、その倍数である18年周期説、72年周期もあるとしている。18年の周期に関しては、千賀氏以外にも、近年の経済問題が1973年オイルショック→1991年バブル崩壊→2008年リーマンショックと、ほぼ18年ないし17年周期だと見る人がいる。また、72年周期に関しては、1923年関東大震災→1995年阪神淡路大震災、1929年大恐慌→2001年9・11同時多発テロ事件などである。


※参考文献18

https://taocode.jimdofree.com/ https://chiga.jimdofree.com/

※参考文献19:

https://chiga.jimdofree.com/%E3%82%8F%E3%81%AE%E8%88%9E%E3%81%A8%E3%81%AF/

  

15.精神世界の周期説:占星学と周期説

上記のガイアの法則が、天体運動の歳差運動を重視するところは、実は占星学と似ている。占星学は、複雑な周期説の総合ということもできる。というのは、天体の運動は、全く周期的であり、それゆえに太陽や月や惑星の地上から見た位置(天球上の位置)も周期的である。

そして、占星学は、星の天球上の位置と、地球上の人間や国の状態がシンクロしていることを前提としたものであり、それを前提として、過去の天体配置と似た天体配置が、未来に周期的にやってくる中で、ある天体配置の時に起こったある出来事が、未来の似た天体配置の時にも起こると考えるものである。

なお、星の天球上の位置と、地球上の人間や国の状態とのシンクロニシティに関しては、統計学的な手法による科学的な検証が試みられたことは乏しい。

その中で、ソルボンヌ大学の心理学者・統計学者ミッシェル・ゴークランは、人の誕生時の火星の位置と、その人の職業の膨大な統計をとり、両者には相関関係があると結論づける論文を発表した。これに対して、疑似科学に対して科学的な調査・批判を行う米国の国際的非営利団体CSIは、この論文を否定できると決めつけて活動したものの、調査して得た結果は予想に反して、この論文を不本意ながら追認せざるを得ない結果になったという(※参考文献20)。

とはいえ、このゴークラン氏の研究では、検証範囲が著しく限定されており(火星に限定)、占星学が前提にするシンクロニシティ全体を検証するには、全く質量とも不十分なものであり、それは今のところ科学的に証明されたということはできないだろう。

また、科学の研究で、この天体現象と地上の現象のシンクロニシティを扱うものがわずかではあるが存在する。例えば、太陽活動は周期的に強くなったり弱くなったりしているが、その結果として、地上にも周期的な現象が生じることである。

例えば、太陽活動が減少すると、太陽の磁力線が弱り、その磁力線が妨げていた地球への宇宙線の放射が増大する。すると、地球上の雲が増大して寒冷化するとか、因果関係は不明であるが、地震や火山噴火の増大と時期的に非常に濃厚な相関関係があることがわかっている。

この逆に、地球や他の惑星の引力が、太陽の表面の流体の動きに影響を与えることがある可能性があるという研究報告もある。その結果、地球等が引き起こした太陽活動の変化が、今度は地球等の惑星に影響を与える可能性があるから、太陽と地球を含めた惑星は相互に影響を与え合っており、その意味で、私たちが知る以上に、両者はシンクロしている可能性がある。

 

※参考文献20:占星学の科学的な検証事例

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%A0%E6%98%9F%E8%A1%93#%E5%8D%A0%E6%98%9F%E8%A1%93%E3%81%A8%E8%87%AA%E7%84%B6%E7%A7%91%E5%AD%A6

 

16.2020年に関するインド占星学の予見 

シンクロニシティの存在は別にして、それを前提とするならば、占星学は、統計学的な色彩を持つことになる。占星学が社会的に高く評価されているインドでは、インド占星学(ジョーティシュ占星学)の大学、教授、学会誌などがあり(※参考文献21)、統計学的な手法で研究されている。

2020年関係では、インド占星学の最高権威のK・N・ラオ氏が、2013年に「2020年にインドは東京五輪には行けないだろう」と予言している(※参考文献22)。また、インドの14才の天才少年アビギャ・アナンダ君が、2019年に「2019年末から2020年前半にかけてウイルスパンデミックが起こる」と予言した(※参考文献23)。

2020年に入って、これらの予言が的中したのではないかと一部で注目を集めている。そこで、私の方で厳密に検証してみると、当たっている部分とそうでない部分の双方があった。ラオ氏の予言に関しては、五輪に行けない原因が、国際的な緊張とされており、またインドが五輪に行けないとしているが、五輪自体の延期には言及がない。

また、アビギャ・アナンダ君の予言は、パンデミックの発生時期は的中したように思われるが、終息の時期を2020年5月末から7月と予言していたものの、今現在の時点でこれは的中しなかったと言わざるを得ない(インドを含めた世界全体で依然として拡大・再拡大しているため)。

 

※参考文献21:インド占星学の学会誌HP

http://www.jyotishajournal.com/

※参考文献22

https://ジョーティシュ.com/current/india-not-participate-in-tokyo-olympic

※参考文献23

https://tocana.jp/2020/04/post_151308_entry.html

 

17.終末を否定して希望ある未来を展望する占星学の未来観 

さて、占星学にも、歳差運動の25800年周期に基づく周期説がある。これは、天球上の春分点にある星座に基づくシンクロニシティの周期説である。今現在は、春分点に位置する星座は、魚座であり、魚座の特徴とシンクロした人類の文明となっているが、間もなく水瓶座に変わるので、人類の文明も変わるという。

その結果は、一部の精神世界が主張する終末・ハルマゲドンなどとは異なって、人類は黄金時代を迎えるというものである。そして、この水瓶座の新時代・ニューエージの到来を期待する精神世界の潮流が、ニューエージ・ムーブメントと呼ばれている。

なお、一説によれば、水瓶座の時代が本格的に到来するのは、24~25世紀とされているが、それは800年周期説において、21世紀から始まる東洋(ないし135度線上)を中心とした文明の絶頂期と、偶然にもほぼ時期が重なる。

なお、地球の歳差運動が25800年であり、天球には12星座があるので、一つの星座の期間は、だいたい2000年ほどとなる。現在の魚座時代は、ちょうど紀元前後に始まったとされる(キリスト教の時代とシンクロ)。各時代の間には、明確な境界線はなく移行期があり、20世紀末から21世紀に、次の水瓶座の時代の影響が現れ始めて、24世紀ごろまでに完全に水瓶座の時代となるという説がある(※付記1参照)。

なお、最近流行った盲説として、マヤ歴が終焉する2012年頃に、人類がフォトンベルトなるものに突入して大破局・終末と意識次元の上昇(アセンション)が起こるというものがあった。この説は、歳差運動の周期にあたる26000年弱の周期を説きながら、それを太陽系の銀河の公転周期と取り違えるという間違いを犯したため、科学的には、全く不合理な説となっていたが、一部の人の間でそのまま広まってしまったようである(※付記2参照)。

なお、初めて米国に定着してヨーガを広く広めたヨーガ行者であるパラマハンサ・ヨガナンダの師匠である、高名なスリ・ユクテスワも、インド占星学を扱い、天体運動に基づく計算から、人類文明の2万4千年ほどの周期説に基づいて、人類社会の未来を予見したことで知られる(その科学的な根拠はよく理解できないが、事実上、歳差運動とつながっていると私は理解している)。

そのスリ・ユクテスワの人類文明には、12000年の上昇期と12000年の下降期があるとするが、今は上昇期であり、さらには終末や崩壊にはほど遠く、そのような心配は全くないという(※付記3・※参考文献24)。

 

※付記1:春分点にある星座 

春分点とは、天球において、黄道(太陽の見かけの通り道)と天の赤道との2つの交点のうち、黄道が、南から北へ交わる方の点=昇交点のことであり、この点を太陽が通過する瞬間が、春分となる。この春分点の位置は、地球の歳差運動によって西向きに移動し、その周期は、約25800年である。そして、春分点の存する星座がその時代(1つの星座で約2千年)を象徴するという説がある。

春分点は、紀元後1世紀から20世紀までは「うお座」にあり、20世紀末ごろに「みずがめ座」に入ったとか、現在移行中という説がある。うお座の時代の次は「水瓶座の時代 (the age of Aquarius)」と呼ばれ、変革を象徴しているなどと考えられ、何らかの世界的変革があると主張される。実際に春分点が「みずがめ座」に入り込むのは、500年以上後のことである。

なお、十二宮と違って、星座の領域は不均等なので、「~座の時代」の期間は、2千年とは限らない。なお、カール・ユングは、独自の計算で水瓶座の時代の影響の開始を1997年としたという。

 

※付記2:2012年のフォトンベルト・マヤ歴終焉に伴う終末説の盲説 

この説は、地球が太陽とともに公転する銀河系には、それを横断するフォトンベルトという帯状の領域が存在し、公転周期が2万数千年であるから、その半分の1万数千年に1度の周期で、それに入ると主張した。しかし、太陽系の銀河系の公転周期は、実際は10億年程度であって、科学的に全く間違っている。恐らくは、地球の地軸の歳差運動と太陽系の銀河系の周りの公転運動を、取り違えてしまったと思われるが、それに気づかない一部の人たちが、妄信してブームとなった。

 

※付記3:スリ・ユクテスワの人類文明の24000年周期説 

※参考文献24:

https://www.morikita.co.jp/books/book/2621、https://www.morikita.co.jp/books/book/2623

スリ・ユクテスワの人類文明の周期説は、12000年の上昇期と12000年の下降期によって構成され、より詳しくは以下の4つの期間に分かれているという。

①カリ・ユガ=鉄の時代:西暦500年~1700年の1200年:

唯物主義

②ドワパラユガ=青銅の時代:西暦1700年~4100年の2400年

電気と原子力の発達=空間を克服する技術:

③トレータユガ=銀の時代:西暦4100年~7700年の3600年

精神感応の能力発達=時間を克服する技術

④サティヤユガ=黄金の時代:西暦7700年~12500年の4800年

高度な知性・神のみ心にかなった行動

なお、上記の周期は歳差運動に近いものの、ユクテスワは(天文学が未発達な時代に生きたためか)太陽系が天体Xの周りを公転していると想定して、その周期と考えた。

また、終末思想のインド聖典の「カリ・ユガ」は上記の周期のものとは異なり、それよりはるかに大規模な43億56万年周期のものであり(聖書の創造のみわざの1日)、宇宙の寿命は314兆1590億年であって、これがブラッマの一時代となる。よって、地球にまだ多くの上昇・下降の周期を繰り返す寿命が残っており、まだ崩壊する時期には来ていないという。



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