ひかりの輪への公安調査庁の観察処分を取り消した東京地裁判決(2017.9.25)について
(2017年9月26日)
●公安調査庁の「主張の柱」を裁判所が否定
すでに広く報道されている通り、ひかりの輪に対する公安調査庁の観察処分を取り消すよう求めた裁判で、東京地方裁判所は、さる(2017年)9月25日、約2年4ヵ月間にわたる審理を遂げた結果、ひかりの輪への観察処分を取り消すとの判決を下しました。
ひかりの輪は、2007年の発足以来10年以上にわたって公安調査庁の観察処分を受けてきましたが、それが明確に違法とされ、取り消される司法判断が出たのは、今回が初めてであり、まさに画期的なものといえます。
この判決に対して、公安調査庁のある幹部は、「我々の主張の柱である、ひかりの輪の設立の経緯まで否定されたのは厳しい」とコメントしています(『読売新聞』2017年9月26日〈紙版〉)。
この公安調査庁が「主張の柱」にしてきたという「ひかりの輪の設立の経緯」とは、
「ひかりの輪は、オウム真理教教祖・麻原彰晃の意思に従って、観察処分を免れるために、アレフ(麻原を信仰するオウム真理教の後継団体)と役割分担をして設立された『麻原隠し(麻原への信仰を表向きは隠しながら、実際には麻原を信仰していること)』の団体である。」
というものです。
そして、このような団体だからこそ、ひかりの輪は観察処分対象団体であるアレフと一体であって危険、よってひかりの輪にも観察処分が必要というのが、公安調査庁の「主張の柱」であり、根幹でした。このような真実から全くかけ離れた虚偽で架空のストーリーが、ひかりの輪に観察処分をかける最大の理由となっていたのです。
しかし、今回裁判所は、そのような公安調査庁の主張を裏付ける証拠はないとして、公安調査庁の主張を根本から否定したのです。
具体的には、判決の94頁に、「原告(※ひかりの輪のこと)の設立は、別団体を組織して、別団体との間で役割分担しながら活動することを求めていた松本(※麻原のこと)の意思に従ってされたものであるとまでは認めることはできない。」という事実認定が明記されています。
だからこそ、同庁幹部は「主張の柱が否定されて、厳しい」とまで述べているわけです。
●「ひかりの輪は麻原への帰依を否定」と認定
ひかりの輪は、今回裁判所が「当初から麻原への帰依を否定している」と明確に認定しているとおり、もともとオウム事件をオウム・麻原の犯罪と認めて直視し、麻原への帰依を否定する者たちが中心となって設立した団体です(逆にアレフは、オウム事件はオウム・麻原が起こしたものではなく、陰謀によって罪をなすりつけられたものであると信者等に教育し、麻原への帰依を強化しています)。
今回の裁判所の判決においても、ひかりの輪の活動として真っ先に認定された事実は、ひかりの輪がオウム・麻原について詳細な反省・総括を行い、広く社会に公表してきたことです。ひかりの輪は、この反省・総括に基づいて、二度とオウム事件のような事件が起こらないようにするための思想の探究や実践を展開してきたのです。
さらに、今もまだオウム・麻原を信仰するアレフから、会員を脱会させる活動を積極的に行って成果を挙げてきたのであり、それもまた今回の判決で明確に認められています。
つまり、今回の裁判所での審理のように、確たる証拠に基づいて公正に判断すれば、ひかりの輪がオウム・麻原への帰依を否定した団体であることは当然に明らかになるわけです。
●ねつ造や歪曲が多い公安調査庁の証拠
しかし、公安調査庁の請求を受けて観察処分適用の適否を判断する公安審査委員会は、公安調査庁が作成した虚偽の内容(ひかりの輪は麻原の意思を受けて設立された「麻原隠し」の団体との虚偽の内容)の証拠を、ほとんど検証もしないまま無批判なまでに採用し、ひかりの輪への観察処分の適用を長年にわたって決定し続けてきたのでした。
公安調査庁が作る証拠とは、公安調査官が関係者から話を聞いてまとめただけの伝聞の調査書がほとんどです。それらは、公安調査官に話をしたという関係者本人の署名・捺印がなく、その氏名すら明らかではなく、公安調査官が勝手に「作文」していると思われるような内容のもので占められていました。
現に、関係者の話が、ひかりの輪に不利になるように、全く正反対の意味にねじまげられているものも多々ありました(このような歪曲証拠の是非を正すため、ひかりの輪では公安調査庁を相手取って国家賠償請求訴訟を東京地裁に提起し、係争中です)。
実際、今年の3月まで公安調査官を務めていた西 道弘氏(本年9月5日に上祐代表と公開対談)によれば、公安調査庁では、調査対象団体の危険性を強調するために、公安調査官が勝手に証拠を作ってしまったりすることがあったそうです。
さらに、公安調査庁からの多額の謝礼金が欲しいために、調査対象団体にとって不利になる虚偽の情報(ひかりの輪について言えば、たとえば「ひかりの輪はオウムと同じ。『麻原隠し』をしている」という虚偽の情報など)を盛んにアピールしたり売り込んで提供したりしてくる一般人もいるそうです(『サンデー毎日』2017年7月16日号における西氏の発言等)。
ひかりの輪に関する公安調査庁の証拠も、そのような性質の、とうてい裏付けのとれない信用性皆無のものが大部分だったのです。
公安審査委員会は、法律のプロとは限らない人たちもまじえて、わずか1ヶ月前後というごく短い期間で膨大な証拠を審査しなければならないため、公安調査庁の証拠の虚偽を見抜くことができず、ほぼ無批判なまでに採用してしまっていました。
ところが、今回の裁判所のような法律・裁判のプロが長期間(今回は約2年4ヶ月)にわたって厳密に精査すれば、とうてい証拠として耐えられるものではなく、ことごとく排除されるほかなかったのが、公安調査庁の証拠群なのです。
その結果、今回、公安調査庁の「主張の柱」は、裁判所によって根底から否定されることになったのです。
●「ひかりの輪とアレフの性格は相当に異なる」
また、今回の判決では、ひかりの輪が観察処分対象団体であるアレフとは別団体である根拠として、「ひかりの輪とアレフの性格は相当に異なるものとなっている」事実があることを指摘しています。
たとえば、団体の発足当初から「基本理念」において麻原に対する絶対的帰依が否定されていることや、哲学教室への改変の事実が認められています。
他に、判断の基礎として認定された事実の中には、ひかりの輪外部監査委員会による監査結果(ひかりの輪には観察処分適用要件が認められないとの監査結果)や、大学教授の指導のもとでの自己反省法「内観」の実践、そして、先に述べたオウム事件への反省・総括の取り組みなどが触れられており、こうしたひかりの輪の長年にわたる様々な努力が評価されたものと見られます。
さらには、ひかりの輪がアレフからの脱会支援をしていることや、アレフが起こしている法的問題(著作権侵害問題)について被害者組織に協力していることを指して、「むしろひかりの輪とアレフは対立関係にあると評価できる」とまで判決は述べています。
かねてから、ひかりの輪では、ひかりの輪とアレフの違いを明らかにしてきましたが、それが裁判所によっても明確に認められ、今回の判決に結び付いたということができます。
●不安の声を受け止め、いっそうの改革努力を
以上のように、今回の判決によって、公安調査庁が流布してきたひかりの輪に関する虚偽の情報は明確に否定されました。
しかし、団体施設の周辺住民の皆様や、オウム事件の被害者の皆様が、過去のオウム事件の体験から、依然としてひかりの輪に対する不安を覚えておられるのは、無理からぬことと思います。現に、今回の判決に対しても、そのような不安を訴える声が報道されていたのを承知しています。
ひかりの輪の一同は、そのような声を重く受け止め、今回の判決をきっかけに、皆様の不安を解消していけるよう、積極的な情報開示などの、よりいっそうの改革努力を進めていくことを決意しております。
※追記(2021.3.18)
上記の東京地裁判決は、その後、東京高裁が取り消し(2019.2.28)、最高裁で確定しましたが(2020.3.10)、取り消した理由は、当団体でも採用している仏教・ヨーガのごく一般的な修行がオウム真理教でも行われていたこと等をもってオウム真理教と同一性がある等というもので、当団体の「脱麻原」「反麻原」の取り組みを無視する極めて不当なものでした(なお、取り消されたのは判決の「主文」の部分〈「観察処分を取り消す」という結論の部分〉であって、事実認定の部分が全て取り消されたというわけではありません)。
本年(2021年)には、さらに公安審査委員会が観察処分の期間を更新したため(2021.1.6)、当団体はその取り消しを求めて、東京地裁に行政訴訟を提起しています(2021.3.8)。