6.心理的瞑想②:万物愛
ここでは、万物を愛する心を培う瞑想法をご紹介します。
万物を愛する心は、宗教だけに限らず、人間の理想とされますが、仏教では、すべての生き物を平等に愛する仏陀・菩薩の心を大慈悲といい、キリスト教では博愛(アガペー)といいます。
万物を知る仏の智慧や神の全知と、万物を愛する仏の大慈悲や神の博愛は、神仏の本質であり、仏道修行者がその体得を目指す境地です。
1.仏教の四(し)無(む)量(りょう)心(しん)の瞑想
仏教では、仏の大慈悲の心は、四無量心とも呼ばれ、四無量心とは、慈(じ)・悲(ひ)・喜(き)・捨(しゃ)という仏・菩薩の四つの広大無辺な利他の心と実践です。
そして、これを実践する本人こそを幸福にすると説かれます。ひかりの輪では、この思想を参考にして、万物を愛する心をわかりやすい現代語で表現した言葉を作り、それを瞑想しています。
ご覧の通り、これは何かの信仰を必要とするものではなく、広い愛の心を培うものです。
◎四無量心(四つの広大な利他の心)
他の幸福を願い 他に幸福を与え
他の苦しみを悲しみ 他の苦しみを抜く
他の幸福を喜び 自己の苦しみを超え
万人万物に平等心を持つ
最新の脳科学では、人間の脳には社会脳という機能があり、利他の心や行為は、心身の健康・記憶力や実行力を高める幸福ホルモンを体内で分泌させる一方、過剰な他者への嫌悪・恐怖・攻撃は、心身の健康や知力を損なうストレスホルモンを分泌させることがわかっています。言い換えれば、利他こそが本当に自分を幸福にするのです。
さらに、脳科学では、困難・苦しみは、人の脳の鍛錬・発達を促し、それに前向きに立ち向かうチャレンジングな生き方が幸福をもたらすともされます。心理学でも、より多くの人の幸福を考える人が、幸福になりやすいという調査結果が出ています。
なお、ひかりの輪では、この万物を愛する瞑想の際に、一般に人気がある仏像の中で、著名な心理学者も、聖なるシンボルと解釈したものの写真画像などを見ることで、その瞑想の効果を高める場合があります。
広隆寺・弥勒菩薩半跏思惟像 中宮寺・菩薩半跏像
2.ひかりの輪オリジナルの読経瞑想
仏教では、万物を愛する仏陀の四無量心とともに、それと結びついた仏陀の物事・世界の見方を、仏陀の「智慧」として説いています。私たちの日常でも、物の見方が変わると、物の感じ方が変わるという体験があると思いますが、さまざまな心理学の理論でも、人の物の見方と感情は深く結びついていることが説かれています。
そして、仏陀とは、目覚めた人という意味で、これは物事・世界の真実の在り方を悟ったという意味があり、すなわち、仏陀のように、この世界の真実の在り方に気づくと、自ずと万物を愛する心が生じるというのが仏教の思想です。言い換えれば、通常の人の世界の見方では、私たちが日常経験するように、万物を愛する心ではなくて、好きな物・嫌いな物を区別する、偏った心が強く生じます。
ここで重要なことは、仏教が仏陀の智慧とする世界の真実の在り方とは、科学的・客観的に見ても世界の真実の在り方であるということです。つまり、私たちの常識的で主観的な世界の見方には、いろいろな錯覚があるのです。
例えば、多くの人は、自分と他人という存在も、自分と他人の幸福も、別のものであり、幸福は自他の間で奪い合うものという認識をしています。
しかし、最新の物理学は、自と他を含めた世界の万物は一体と見ており、これが仏教の世界観とよく一致することは、ユネスコに集まった科学者と仏教者の会議でも指摘されています。
また、最新の脳科学が、仏教が説くように、利他こそが利己であり、自と他の幸福は一体とする見方を持っていることは、先ほどご紹介した通りです。
また、私たちは、楽と苦を別のものと見て、それが物事の好き嫌いの源になりますが、実際には、苦と楽は絶対的なものではなく、比較によって生じ、両者はセットで存在し、それゆえに、「苦楽表裏」「人間万事塞翁(さいおう)が馬」などといわれます。同じく、多くの人が、自分と他人の優劣を比較し、他人はおろか、自分さえ愛せぬコンプレックス等で苦しみますが、固定観念を超えた仏陀の客観的な物の見方では、短所と長所(劣等性と優等性)も裏表であり、表裏一体です。
そこで、ひかりの輪では、仏陀の科学的・客観的な世界観(智慧)と、万物を愛する心を現代語でわかりやすく表現した言葉を以下のように作り、それを瞑想しています。
◎三悟心経(三つの悟りの心の教え)
万物恩恵 万物感謝
万物神仏 万物尊重
万物一体 万物愛和
◎三悟智経(三つの悟りの智慧の教え)
苦楽一体 万物感謝
優劣一体 万物尊重
自他一体 万物愛和
◎三縁起経(三つの縁起の教え)
万物関連 万物一体
万物同根 万物一体
万物循環 万物一体
また、このような思想を説く仏典が、その世界観を、丸い形をした曼(まん)荼(だ)羅(ら)と呼ばれる図画に表したものがあります(右の図)。曼荼羅とは丸いという意味で、この円形の図画は、宇宙と真理と悟りを象徴するとされています。ひかりの輪でも、この図画を見ながら瞑想する場合があります。
金剛界曼荼羅(🄫瞑想の郷)