第363回『ポスト平成の時代の社会と心の問題:長寿社会』(2018年4月15日 大阪 68min)
(2018年4月18日)
1)ポスト平成の時代の特徴
1.経済:グローバル資本主義から一国主義の台頭による混乱
2.政治:米国主導の国際社会から多極化社会・Gゼロ状態の混乱
→未来の国際協調・政治のグローバル化=世界連邦への道程?
3.技術:人工知能・宇宙開発
1.IT・人工知能の広がり・人間の労働・活動の質の変化
2.宇宙開発(の民営化)の発展と宇宙体験の大衆化の始まり
4.社会:少子高齢化社会から国際化社会・長寿社会の広がり
5.環境:気候・エネルギー問題の激化
高齢化社会=長寿化社会=高齢期が長い人生と高齢者中心の社会
→二極化する老後の状態・人生全体を見渡して幸福を考える必要性。
人工知能の発展=肉体労働に加え知的労働も機械が行う時代
→競争に勝つ知能ではなく、心の幸福を得る智慧の重要性の増大
2)長寿化社会の心の問題:心理学・脳科学・社会学・仏教思想の視点
1.高齢者の攻撃的な言動:キレる老人
最近老人の攻撃的な行動が目立つ
駅員への横暴、病院での横暴、店舗でのクレームなど
最近15年間の統計で高齢者の犯罪(発生率)の増加など
2.高齢者のキレる現象の原因・背景
(1)脳の前頭葉の萎縮による機能低下
1.前頭葉は理性・衝動の抑制・意欲・思考を司る
2.前頭葉の機能の低下がもたらす問題
①感情抑制機能の低下→怒りなどを抑えられない
②判断力の低下→おれおれ詐欺の被害
③意欲の低下→鬱・引きこもり→体力の低下
④性格の先鋭化→元からの欠点がより目立つ(疑い深さなど)
(2)喪失体験の増大(今まであったものを失うことによる失意)
1.定年退職、肉体・知性の衰え、配偶者・友人の死など
2.高齢者は喪失体験からの立ち直りも遅い(前頭葉の機能低下なども原因)
3.自分の能力の低下への腹立たしさが、他者への怒りを暴発させる背景要因に
(3)心理的側面:固定的な物の見方・忍耐力の低下・精神的な飢餓感
1.こうあるべきだという思い込みが強く、自分に腹がたち、他者にキレる
2.忍耐力が低下して、待ちきれず切れて、孤独になる
3.周囲から大事にされていないという飢餓感からキレる場合もある
3.予防策
(1)前頭葉を鍛える
①退職後も、複雑な計画性を要する作業を積極的に行う
②計画的な生活を送る(やることリストを作る)
③新しいことに挑戦する(新しい作業=前頭葉が担当)
④適度な運動→脳内の血流の改善。姿勢の改善も有効
⑤座禅等の瞑想を行う(煩悩の抑制は、理性の強化そのもの)
(2)喪失体験に対応する心理学的なノウハウ(SOC理論)
①目標を調整する(若い時の目標に固執せずに、無理のない目標を設定する)
②今ある能力を目標達成に最も効率よく使う(体力の低下を技術・経験で補うなど)
③他者の補助も借りる(他人の支援・補助器具を活用、自分の能力に固執しない)
(3)極端で否定的な物の見方を和らげる認知療法
高齢者にありがちな固定的で否定的な見方を解消する
(4)苦楽表裏の仏教思想の活用
加齢・老化の裏のある長所に気づく。老化の逆活用による幸福