第383回『無我の思想:「私」は実在せず、「自由意思」も存在しない?』(2018年9月30日東京63min)
(2018年10月 2日)
他者と別の「私」が存在し、自分の意志で行動するという常識は間違い。
自他が一体なのが真実の世界の在り方であり、私とその意識・意志の真実を
示す仏教と最新科学の理論を解説。
1.無我の思想:他者から独立した「私」は存在しない
(1)仏教の「無我」の思想、ヒンドゥー教の「真我」の思想
(2)私だけの思考・知識・言語は存在しない→自他の思考の繋がり
(3)私の体だけを構成する分子は存在しない→自他の体の繋がり
2.意識とは
(1)意識の定義は未確立:他人に意識があるかも確認しようがない
(2)意識と脳の関係:意識と脳は別物とする物心二元論(実体二元論)、
意識は脳が生み出すと考える物理主義
(3)意識は全ての行動を決定していない=無意識の行動
睡眠中は無意識、夢遊病者は無意識で行動、半盲の事例など。
(4)自由意思は存在しない?意志は脳・体が作っている?
行動をする際、それを意識で意志する前に、脳が活動している?
3.仏教が説く、自己愛の喜びと苦しみの心理構造
(1)苦楽は比較、セット、変化し、実体がない。
苦楽は表裏で、楽が苦に、苦が楽に変わる。
(2)自己愛の喜びは飽きが生じ、際限なく求め、苦しみを招く
求めても得られない苦、失う苦、奪い合い憎み合う苦
(3)現代社会でも、皆が幸福を求めつつ、多くが苦しんでいる
自殺者数万、未遂者数十万、うつ病数百万などなど。
(4)高齢期は若年期より苦しみ・不幸が多い
①失う苦しみ=喪失体験が増大し、うつ病、自殺、認知症など。
②心・感情をコントロールする力(EQ)が40代以降低下
4.心のコントロールの術
(1)心理学・心理療法
①喪失体験への対処法=SOC理論
②極端に否定的な思考を修正:認知行動療法
(2)心の制御をする力を鍛えるヨーガ・仏道修行
①仏教の苦楽表裏(損得表裏)の思想:「智慧」
②心が安定する日常の行動を保つ:「戒律」
③心の安定する体の使い方:ヨーガの身体行法
筋肉の弛緩、呼吸法、姿勢、発声法、歩行など。
④心の安定する環境の整備:衣食住・人間関係