第305回『日常の世界と悟りの境地の違いと、双方に生きる道』(2016年11月13日 大阪 74min)
(2016年11月14日)
1.日常の世界(現世)
普通の人は、日常体験する世界を唯一の現実と錯覚しているが、それは、自分の五感と思考が意識に現したものに過ぎず、人・生き物の数だけ無数の現実があり、絶えず変化する無常なもので、自と他の区別・対立があり、そのため苦しみがある。
2.悟りの境地(涅槃)の違い
悟りの境地・涅槃には、五感・思考・感情は存在しない(五感・思考を介さず、世界を直接体験したもの)。変化がなく、自他の区別・対立がなく、苦しみがない。神聖・静寂・平安な状態。五感・思考の働き静める瞑想によって体験する。
3.現世と涅槃を行き来する
仏教的に理想の生き方は、現世にも涅槃にも執着しないこと。現世の苦しみは執着が原因だが、涅槃を体験して執着を滅し、現世を足るを知って苦しみなく、他者を悟りの境地に導き、分かち合い=慈悲の精神で生きる道(菩薩道)がある。また、この静まった精神は、物事を正確に見るので、現実の問題を解決し、物事を達成することもできる(止観)。
4.現世の苦しみが喜び・導きに変わる
涅槃の体験をすれば、現世の苦しみは無意味ではなく、自分を涅槃に導く愛の鞭だと理解する。喜びに限らず苦しみを含めた全てが悟りに導く経験であり、世界に大いなる導きの意思を感じる人も(輪廻即浄土・現世即浄土)。