第396回『仏教の「愛」の思想:欲愛と慈悲:真に愛されるには』(2019年1月27日 東京 67min )
(2019年1月28日)
1.愛という言葉(漢訳語)は様々な異なる意味を含む
相反する心・行為を同じ愛と呼んでいる。
2.渇愛・愛着(タンハー・トリシュナー)
(1)欲愛(カーマタンハー)
(2)有愛(生存への欲求)
(3)無有愛(非生存の欲求)
3.慈(メッター・マイトリー)と悲(カルナー)
(1)慈:他の幸福を願い、幸福を与える
(2)悲:他の苦しみを悲しみ、苦を抜く
4.自分のために相手・他者に求める愛
(1)タンハー(渇愛)は苦の原因
1.四苦八苦をもたらす。得られぬ苦、失う苦
奪い憎み合う苦など。
2.我欲・エゴ・他に奪い勝つ喜び
(2)他への愛の行為の背景に自己愛・見返りの期待
自己への愛が第一で、相手・他者への愛は第二
(3)自分と相手・他者との利害が一致しない
相手を過剰に束縛し、他者との妬み奪い合いも。
捻る、噛みつく、脅す、相手に苦を与える場合も
→結果として愛されず、幸福にならない
(4)背景にあるのは自他の幸福の区別=無智(痴)
無智がエゴ、過剰な自己愛、自己中心を生む
5.相手のために自分が与える愛
(1)慈悲(メッター・カルナー)
無償・見返りを求めぬ愛、自他の幸福の区別がない
苦の原因=タンハー(渇愛)を取り除く
我欲・エゴを和らげ、他と苦楽を分かち合う。
(2)慈悲の恩恵
1.苦がなく安定した心:四苦八苦がなく苦に強い
2.他を愛する広く温かい心による幸福
3.心身の健康・長寿(心の安定・幸福から)
4.良い人間関係:他から愛・幸福が返る
5.知性の向上
(3)慈悲は智慧が支える
自他の幸福を一体と悟る智慧に基づく
(4)真に愛されるには? 特別な存在になるには?
1.自己愛の強い人はありふれており、特別ではない
2.慈悲の強い人は希少であり、愛される。