第274回『 全ては心の現れと説く仏教哲学‐敵と友も心が作り出す』(2016年3月6日 名古屋 56min)
(2016年3月 6日)
1.すべては心の現れ
重要な仏教哲学の一つとして、外界は全て自分の心の現れであるというものがある。それぞれの人は、異なる五感と意識を持っており、そのため、人によって、同じ現象を異なる印象を持って受け止める。
言い換えれば、一つの確たる世界があると言うのではなく、実質上10人に10人の世界がある。これは、大乗仏教の唯識思想と呼ばれる思想の一部でもある。
これは、仏教の縁起と空の思想にも合致する。それは、あらゆる事物は、原因・条件によって生じ(=縁起の法)、原因・条件が変われば変化するため、固定した実体がない(=空である)と説く。よって、外界を受け止める五感や意識が異なれば、感じる世界も変わる、ということである。
そのため、前回の哲学講座では、心の持ち方・考え方によって、苦しみも喜びに変えることができると説いた(同じように、喜びも苦しみに変わることがある)。
2.心が作る敵と友
さて、今回は、人にとって、最大の苦しみの対象の一つである「敵」という存在も、自分の心が作り出す面があることを解説する。すなわち、敵も、自分の心の持ち方が条件となって生じるものであって、心の持ち方によって、友が敵に見えるし、逆に敵を友と見ることも可能なのである。以下に、その事例を挙げる。