第342回『人の中の内なる神と、それを引き出す聖なる象徴・シンボル』(2017年9月10日福岡 80min)
(2017年9月10日)
1)内なる神仏の思想
宗教は一般に、人が神仏を信じるとして、人間と神仏を区別し、神仏は絶対的・超越的な存在である場合が多い。この場合、人間と、人間を包む自然・宇宙は、神仏とは別の存在となる(唯一神論)。
しかし、宗教の中には、神仏も、人の心の現れ、人の中にある神性・仏性の現れと考え、万人・万物に神性・仏性を認め、人・自然・宇宙と神仏(の現れ)として一体と見る思想がある(汎神論)。この内なる神の思想は、ユングのような深層心理学の中でも説かれている(いわゆる「自己」の思想)。
2)聖なるシンボル
人の中の内なる神仏は、悟った人・聖人ではなく、普通の人の場合には、普段は隠されているが、それを引き出して活性化させるもの、すなわち神性・仏性を覚醒させる助けとなるものを聖なる象徴・シンボルと呼ぶことがある。仏教徒には、ブッダ、キリスト教徒にはイエス、イスラム教徒にはムハンマドがシンボルの一つだが、諸宗教・諸民族に共通し、人類普遍の聖なるシンボルも存在する。
3)聖なる存在の普遍的な象徴
1.光 太陽と結びつけられることも多い(太陽神)
エジプトの神のアメン・ラー、哲学ではプラトンの善のイデアの象徴
聖書でイエスが「世の光」、父なる神が光源で、光がイエス。
仏教では、光は、仏の智慧や慈悲を象徴。智慧の智は日を含み、
無智は無明と表現。大乗仏教の中心的な仏は大日如来(太陽の仏)
神道の神の総帥も天照大神(太陽神)。日本では朝日をご来光(仏の象徴)
体から発せられる後光は、宗教全体で普遍的なもの。例えば、
ミスラ神(太陽神)、古代ローマ、エジプトの太陽神ラー、
イスラム教のムハンマド、イエスや聖母マリア、仏教の曼荼羅にも。
2.輪・円
後光も輪の形が多い。仏教では、聖なる象徴に円形の曼荼羅、
禅の円相、法輪など。道教では宇宙の根源を表す太極図が円形。
古代の宗教的な遺跡にもストーンサークル(環状列石)。
ユングの研究では、人類全体に多く見られる神聖なシンボルは、
円・球・卵で、中心に太陽・星・十字形、光線を放っている。
3.ひかりの輪の「天空曼荼羅」
ひかりの輪の発祥において、その創設メンバーが聖地における瞑想とともに
よく体験した太陽の周りの虹の光の輪(気象現象としては日(ひ)暈(がさ)。
ユング自身も、象徴の一例として、太陽の周りの虹の光輪を著書で紹介。
虹の光輪であるブロッケン現象は、日本では御来迎=阿弥陀如来と解釈。
4.虹
古来、さまざまな民族の文化や宗教などで、重要な意味を持ってきた。
仏教では、釈迦牟尼、聖者、チベット仏教・ゾクチェンなどと縁がある。
ユダヤ・キリスト教文化では、聖書のノアの洪水の物語で、虹は、
神とノアの契約の印とされ、聖なる象徴である。