第382回『苦楽を感じる心理構造と、苦しみに強い心の培い方』(2018年9月23日 福岡 61min)
(2018年9月24日)
1.苦楽を感じる心理構造
(1)苦楽は別物のようで、実際は苦楽は比較で生じるから、苦楽はセットで生じる。
比較で生じるために、苦楽は移り変わり(無常)、実体がない(空)。
(2)何か喜びにとらわれれば、際限なく求める落とし穴にはまり、
得られない苦しみ、失う苦しみ、奪い合い・憎み合う苦しみを招く。
(3)一般に加齢とともに喜びが減り、苦しみが増す(生老病死の苦しみ)。
高齢者の方が、各種の喪失体験、落ち込み、うつ病、自殺が多い。
感情をコントロールする力(EQ)は、40代が最高で後は低下する一方で、
喪失体験は加齢とともに増大し、その落ち込みで鬱、認知症、自殺に。
2.自己愛(ナルシズム)の心理構造
(1)幼少期の人間は自己万能感(誇大自己)を有している。普通は成人するにつれて、
これは相対化され、多くの人間の一人であることを自覚して社会に適応する。
(2)うまく相対化されず、成人しても強い自己愛が残る場合もある(誇大自己症候群)。
この場合、理想と現実のギャップのため、強いコンプレックスが生じる。
劣等コンプレックス(引きこもり)、優越コンプレックス(問題を他人の責にする)
(3)普通の人も、自己愛を完全には乗り越えてはおらず、自分を特別視する感情がある。
よって、自分の場合も、楽にとらわれると苦しみを招くとは悟りきっていない。
これが、加齢とともに生じる喪失体験の増大への対処を遅らせて難しくする。
3.自己愛の喜びを超えた、慈悲による真の幸福
(1)上記の通り、自己愛による喜びは、とらわれれば苦しみを招く
(2)慈悲心、すなわち、他の幸福を願い、喜び、助け、他の苦しみを知り悲しみ、取り除く、という、広く深い温かい心による幸福は、上記の自己愛のような苦しみは招かない。
(3)自分の自己愛を満たす喜びは、他の妬みの原因=他の苦しみの原因となるが、
自分の幸福を願ってくれる者、自分の苦しみを悲しむ者を妬む・嫌う者はいない。
(4)多くの他の苦しみを気にかける広い深い心は、自分の苦しみが小さく感じられ、
苦しみに強い心を培い、更に、自分の苦しみを他の苦しみを知り、他と繋がる、
慈悲の源に転換することができる(観音菩薩の教え)。
(5)自己愛の喜びだけでなく、自己の苦しみを他の苦しみへの慈悲の源とすることも、
生きる力・動機・勇気を与える。仏陀=慈悲=生きる力=生命力=命である。